「第三者からの情報取得手続」と「財産開示手続」の違いを徹底解説|手続の流れ・活用シーン・実務ポイントを詳しく解説!

財産開示手続きと第三者からの情報取得手続は、密接な関係があり、関連性の高い制度です。もっとも、両制度とも使用頻度は決して高いとは言えず、この制度の違いを実務家でもしっかりと説明できる人は少ないと思われます。

この記事では、財産開示手続きと第三者からの情報取得手続きの違いを徹底的に解説したいと思います。最後までお読みください。

第三者からの情報取得手続と財産開示手続の違いを徹底解説

そもそも「第三者からの情報取得手続」と「財産開示手続」とは?

⏳債務者の財産を把握するための手続き 強制執行をするためには、債務者の財産を特定することが不可欠です。

しかし、債務者が財産を隠したり、不明確な情報しか提供しない場合、債権者は適切に回収できません。
これを解決するために設けられたのが、
✅ 「第三者からの情報取得手続」
✅ 「財産開示手続」
の二つの制度です。

それぞれの目的と活用シーン

手続き名 目的 活用シーン
📌第三者からの情報取得手続 第三者(金融機関や勤務先)から債務者の財産情報を取得する 銀行口座や給与支払者の特定
不動産情報の取得
📌財産開示手続 債務者本人に財産の詳細を開示させる 債務者が財産を隠している可能性がある
✅ 他の手段で財産情報を取得できない場合

🔍 法的根拠と手続の違い

📖 法的根拠(民事執行法)

手続き 法的根拠
📌第三者からの情報取得手続 民事執行法 第204条~第209条
📌財産開示手続 民事執行法 第196条~第203条

📌 民事執行法改正(令和2年4月施行)
この改正により、「第三者からの情報取得手続」が新設され、債権者が銀行や勤務先などの第三者から直接情報を取得できる仕組みが整いました。

📌 「第三者からの情報取得手続」と「財産開示手続」の違い

👤 債務者本人に情報を求める vs 🏦 第三者から情報を得る

比較項目 第三者からの情報取得手続 財産開示手続
対象者 金融機関・勤務先・登記所などの第三者 債務者本人
取得できる情報 銀行口座の預貯金、給与支払者、不動産情報 債務者が申告した財産情報(不動産、預貯金、動産など)
強制力 裁判所の命令で第三者が情報提供を義務付けられる 債務者に出頭・開示義務があり、違反すると刑事罰の可能性あり
信頼性 第三者の情報なので高い 債務者の自己申告のため、不正のリスクあり

具体的にどのような場面で使われる?

📌 第三者からの情報取得手続の活用例

✅ 銀行口座の預貯金差押えをするため、どの金融機関に預貯金があるかを特定したい
給与差押えを行うために、債務者の勤務先を知りたい
✅ 不動産差押えのために、債務者が所有する不動産の情報を把握したい

📌 財産開示手続の活用例

✅ 債務者が財産を隠している可能性が高いため、本人に開示を強制したい
✅ 債務者に不動産や預貯金があるか不明な場合に、全体の財産状況を把握したい
✅ 強制執行を実施する前に、債務者の財産状況を確認したい

 

 手続の流れと必要な条件

~「第三者からの情報取得手続」と「財産開示手続」の具体的な流れ~

債権回収において、「財産の特定」は最も重要なステップです。

ここでは、**「第三者からの情報取得手続」と「財産開示手続」**それぞれの流れと必要な条件について詳しく解説します。

第三者からの情報取得手続の流れ

債務者の財産を第三者から取得する手続き

📍 どのような情報が取得できる?

種類 取得できる情報 情報を持っている第三者
🏦 預貯金情報 銀行口座の有無、支店名、残高情報 銀行・信用金庫・ゆうちょ銀行など
💼 勤務先情報 給与を支払っている会社名 会社・自治体
🏠 不動産情報 債務者が所有する土地・建物の情報 法務局(登記所)
📜 公的年金情報 年金の支給状況 日本年金機構

📝 申立ての流れ

1️⃣ 📄 債権者が裁判所へ申立て
🔹 必要なもの:債務名義(判決・公正証書・和解調書など)
🔹 申立て先:債務者の住所地を管轄する地方裁判所
2️⃣ ⚖️ 裁判所が審査し、認められれば情報取得命令を発令
3️⃣ 🏦 第三者(銀行や勤務先)が情報提供(裁判所経由で回答)
4️⃣ ✅ 債権者が取得した情報をもとに、強制執行の準備を進める

📢 申立てに必要な条件

調査対象が、預貯金情報以外は、財産開示手続きを行っておく必要がある。

第三者からの情報取得手続は、「強制執行または担保権の実行における配当手続において完全な弁済を得られなかった場合(民執197条1号)」、または「知れている財産に対する強制執行を実施しても完全な弁済を得ることができない場合(民執197条2号)」であること

✅ 債務名義があること(判決・強制執行認諾付き公正証書など)
✅ 債務者の財産を特定できないこと(完全な弁済が受けられない状況)
✅ 申立ての手数料を納付すること(情報の種類によって異なる)

財産開示手続の流れ

✅ 債務者本人が財産を開示する手続き

📍 どのような情報が取得できる?

財産の種類 開示対象
🏦 預貯金 全金融機関の口座情報
🏠 不動産 土地・建物の所有状況
🚗 動産 車、貴金属、骨董品など
📜 売掛金・権利関係 売掛債権、退職金、年金受給権など

📝 申立ての流れ

1️⃣ 📄 債権者が裁判所へ申立て(債務者の財産開示を請求)
2️⃣ ⚖️ 裁判所が債務者を呼び出し、財産開示の命令を出す
3️⃣ 📅 債務者が裁判所へ出頭し、財産を開示
4️⃣ 📝 債権者が開示された財産情報を基に強制執行の準備

📢 申立てに必要な条件

債務名義があること(判決・和解調書・公正証書など)

✅ 債務者に対し、強制執行を実施しても弁済が得られないこと
✅ 裁判所へ所定の申立書を提出し、手数料を支払う

⚠️ 財産開示手続の義務と罰則

❌ 債務者が不出頭、虚偽の陳述をした場合 → 6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金

両手続の比較:第三者からの情報取得手続 vs. 財産開示手続

債権回収の手続には、大きく 「第三者からの情報取得手続」 と 「財産開示手続」 の2つがあります。それぞれの目的や特徴を理解し、適切な手続を選択することが重要です。

本記事では、両手続を項目ごとに比較しながら、実務上のポイントや法改正の影響 を解説します。

目的の違い

💡 ポイント!

「第三者からの情報取得手続」は、金融機関や勤務先などの第三者から情報を取得できるため、より客観的で信頼性の高い情報が得られる。

一方、「財産開示手続」は、債務者自身の申告に依存するため、不正や虚偽の可能性がある。

取得できる情報

項目 第三者からの情報取得手続 🏦 財産開示手続 🏠
取得情報 ✅ 預貯金情報(銀行口座の有無・残高)
✅ 給与支払者情報(勤務先・給与額)
✅ 不動産情報(所有物件の有無・評価額)
✅ 債務者が保有する全ての財産情報(不動産・現金・株式など)
情報の信頼性 第三者(銀行・勤務先)が提供するため、客観的で正確 債務者の自己申告のため、隠匿・虚偽のリスクがある

 

💡 ポイント!

第三者からの情報取得手続の方が 「金融機関からの客観的なデータ」 を取得できるため、信頼性が高い。
しかし、不動産以外の動産や現金など、第三者が把握できない財産については、財産開示手続が有効。

法改正による影響

項目 改正前(旧法) 改正後(新法:令和2年4月1日施行)
第三者からの情報取得手続 ✅ 規定がなかった ✅ 新設された
財産開示手続 ✅ 出頭義務の罰則が弱く、開示拒否が横行 ✅ 債務者の出頭義務が強化され、刑事罰が科されるようになった

💡 ポイント!

  • 第三者からの情報取得手続は、新しく設けられた制度
  • 財産開示手続は「実効性の向上」が目的で、債務者が情報を隠すリスクを減らすために罰則が強化された。

🔎 まとめ:どちらの手続を選ぶべきか?

状況 推奨手続
銀行口座や勤務先を特定したい ✅ 第三者からの情報取得手続 🏦
債務者が財産を隠している可能性が高い ✅ 財産開示手続 🏠
裁判所の強制力を使って情報を開示させたい ✅ 財産開示手続(刑事罰あり) ⚖
強制執行のために客観的な財産情報が必要 ✅ 第三者からの情報取得手続 📑

📌 実務的には、両手続を組み合わせて使用することが必要。
「まずは、財産開示手続で追加の情報を開示させる、その後、第三者からの情報取得で口座や不動産情報を得る」

 

まとめ

本記事では、「第三者からの情報取得手続」と「財産開示手続」の違いを詳しく解説しました。どちらの手続も債権者が強制執行を適切に進めるために重要な役割を果たしますが、それぞれ異なる特長があります。

第三者からの情報取得手続 は、銀行口座や勤務先、不動産情報を 金融機関や登記所などの第三者 から取得できるため、 客観的で正確な情報 を得ることができます。

財産開示手続 は、債務者本人に直接 財産を開示させる手続 であり、 隠された資産の発見 や、その他の情報を取得するために有効です。ただし、債務者が開示義務を果たさない場合には罰則が適用されます。

💡 実務のポイント

  • ず財産開示手続を活用し、追加の情報を開示させる。
  • その後、第三者からの情報取得手続を行い、より正確な情報を取得する。
  • ケースに応じて、両手続を組み合わせることで、より効率的な債権回収が可能となる。

🚀 弁護士の活用も重要!

手続の選択や申立ての適切な進め方については、専門的な知識が求められます。弁護士に相談し、状況に応じた適切な対応をとることが、スムーズな債権回収の鍵となります。

 「どの手続を選べばいいかわからない」「申立ての流れを詳しく知りたい」
そんな方は、ぜひ当事務所の弁護士にご相談ください。

 

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