【弁護士解説】腰椎圧迫骨折による後遺障害の逸失利益!適正な労働能力喪失率(6級・8級・11級)と増額のポイント

腰椎圧迫骨折 逸失利益

【弁護士解説】腰椎圧迫骨折による後遺障害の逸失利益!適正な労働能力喪失率(6級・8級・11級)と増額のポイント

交通事故で腰椎を圧迫骨折し、その結果として脊柱変形障害(後遺障害)を負ってしまった被害者の方は、保険会社から提示された逸失利益の金額が適正なのか不安を感じていませんか?

腰椎圧迫骨折による逸失利益の算定は、裁判例の傾向を知らずに交渉すると、本来もらえるはずの金額よりも大幅に低く抑えられてしまうリスクがあります。

この問題の背景には、後遺障害等級表上の労働能力喪失率(6級:67%、8級:45%、11級:20%)が、脊柱の変形という器質的障害の性質にもかかわらず、裁判所で個別の事情によって修正・逓減される傾向があるからです。

ここでは、腰椎圧迫骨折を原因とする**脊柱変形の後遺障害(6級、8級、11級)**に特化し、最新の裁判例の傾向を詳細に分析し、適正な賠償金増額に向けた具体的な戦略を専門弁護士の視点から解説します。


 

1. 腰椎圧迫骨折による逸失利益算定の基礎知識

逸失利益の計算式と争点

逸失利益とは、交通事故による後遺障害がなければ、将来にわたって得ることができたはずの収入(利益)を指します。

逸失利益は、以下の計算式で算定されます。

逸失利益 = (基礎収入) × (労働能力喪失率) × (労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)

交通事故による腰椎圧迫骨折の事案(脊柱変形障害)では、保険会社は特に労働能力喪失率労働能力喪失期間について、等級表の目安よりも低い数値を主張し、賠償金を減額しようとする傾向があります。

適正な逸失利益を獲得するためには、この2つの要素を巡る裁判所の判断傾向を把握し、反論することが極めて重要となります。


 

2. 後遺障害等級ごとの裁判例の傾向と認定の目安

腰椎圧迫骨折などによる脊柱変形障害の後遺障害等級は、変形の程度に応じて以下の3段階で認定されます。

等級 障害の内容 等級表上の喪失率 裁判例の認定傾向
6級5号 脊柱に著しい変形を残すもの 67% 等級表上の喪失率が前提とされるが、具体的症状や就労状況で修正される。
8級相当 脊柱に中程度の変形を残すもの 45% 等級表通りか、20%〜40%台に修正される例が多い。否定例は少数。
11級7号 脊柱に変形を残すもの 20% 等級表通りも多いが、14%以下に修正、または逓減される例が一定数ある。

 

(1) 6級の裁判例の傾向(喪失率:67%)

6級の裁判例の傾向は、等級表上の喪失率(67%)を前提に、具体的症状、事故前後の就労状況、既存障害の存在を考慮して修正しているものといえます。

  • 認定の目安: 脊柱の支持機能を大きく害する程度が大きい場合は、等級表上の喪失率を大きく下回ることは少ないとされています。
  • 修正された事例: バス運転手の事案では、症状固定後も運転手として勤務していたことや、既存障害があったことなどを考慮し、喪失率が**59%**に修正されました。

(2) 8級の裁判例の傾向(喪失率:45%)

8級の裁判例では、等級表上の喪失率(45%)をそのまま認定した例が5件あり、脊柱の支持機能に対する支障が相当程度評価されています。

しかし、脊柱の支持機能や運動機能が維持されている具体的な事実を考慮して、40%から20%台の労働能力喪失を認定している裁判例も多くあります。

  • 減額修正の主な理由: 事故による骨折部分の骨癒合が良好で、医師が通常の労務に服することはできるとしていたこと、あるいはバイクで長距離走行をしていたなど、脊柱の支持機能及び運動機能が相当程度維持されていると判断された場合です。
  • 労働能力喪失が否定された事例: 68歳の兼業主婦の事案では、「脊柱の変形障害は、一般的に労働能力を喪失させるものとは認められない」ことなどを理由に、労働能力喪失を否定しています。

 

(3) 11級の裁判例の傾向(喪失率:20%)

11級の事案では、等級表上の喪失率(20%)をそのまま認定する裁判例(16件)が尊重されています。

一方で、**等級表より低い喪失率を認定した例(16件)喪失率の逓減を認定した例(7件)**が一定程度認められる傾向があります。

  • 減額修正の主な理由:
    • 脊柱の変形の程度が軽微であることや、支持性への大きな影響がないとされたこと。
    • 減収がないことや、労働に対する支障が脊柱変形それ自体ではなく神経症状(疼痛)を原因とするものであるとされたこと。
  • 労働能力喪失が否定された事例: 手術(椎弓形成術等)による脊柱変形(11級)の事案で、その内容・程度に照らすと「労働能力を低減させるものではない」として、実質的に否定されました。

 

3. 労働能力喪失率の修正・逓減・否定に影響する「個別事情」

保険会社は、逸失利益を減額するために、以下の個別事情を主張してくることが予想されます。被害者側はこれらの要素について、具体的な支障を立証し反論する必要があります。

(1) 裁判所が特に重視する要素(増額・減額のポイント)

  • 脊柱の支持機能・運動機能の維持の程度(変形の程度):
    • 骨癒合が良好で、支持性への大きな影響がないと判断された場合、喪失率は低く修正される方向に働きます。
    • 脊柱の安定性・保持性に重大な支障が生じているか否かが、重要な判断要素です。
  • 神経症状の有無・程度:
    • 脊柱変形に伴う疼痛やしびれといった神経症状は、生活上・就労上の支障として考慮されます。
    • 神経症状がないからといって一概に労働能力喪失を否定することは相当ではないとされています。
  • 事故前後の就労状況・減収の有無:
    • 事故後も減収がなく、職務を継続している事実は、労働能力の低下が顕在化していないとして、喪失率を減額する方向に働くことがあります。
    • ただし、減収がないことが被害者の努力によるものであると評価され、減額の理由とされない場合もあります。
  • 被害者の職業:
    • 肉体労働者長時間の運転を伴う職業など、腰部への負担が重い職業については、就労上の支障を肯定する方向で考慮される傾向があります。

 

(2) 若年者への影響と労働能力喪失率の「逓減」

症状固定時が若年の被害者の場合(30歳未満など)、症状の経年による軽減慣れが期待できるとして、喪失率が一定期間ごとに逓減されたり、喪失期間が制限されたりする裁判例が一定数存在します。

  • 逓減の事例: 23歳の男子大学院生(8級相当)の事案で、症状固定後5年ごとに喪失率を**45%→30%→14%**と逓減して認定しました。
  • 反論の必要性: 脊柱変形は器質的な障害であり、安易な逓減や期間制限については裁判所も慎重に判断しているといえます。

 

4. 適正な逸失利益を獲得するための戦略

争点になる要素の立証を徹底する

 

保険会社の主張に反論し、適正な逸失利益を勝ち取るためには、以下の証拠収集と主張が不可欠です。

  1. 脊柱の支持機能の具体的な支障の立証
    • 単なる「変形が残った」という事実だけでなく、変形によって脊柱の安定性・保持性が具体的にどの程度損なわれているかを示す、医師の意見書などを準備します。
    • 日常生活での支障(長時間の立位・座位、重い物の持ち運びなど)が、具体的にどのような作業に、どの程度の困難をもたらしているかを詳細な陳述書で明確に立証します。
  2. 減収がない場合の反論
    • 減収がないのは、職場の配慮や、被害者自身の過度な努力によるものであることを具体的に主張・立証します。
    • 現職に留まっていることが、労働能力が失われていないことの証拠ではないことを、裁判例の判断傾向に基づき論理的に反論します。

専門弁護士への相談が不可欠です

腰椎圧迫骨折による脊柱変形障害の逸失利益算定は、上記のように、後遺障害等級という一律の基準だけでは判断できず、個々の症状、職業、就労状況、将来的な影響を最新の裁判例の傾向と照らし合わせて検討する必要があります。

適正な賠償金、特に逸失利益を獲得するためには、交通事故・後遺障害に関する専門的な知識と豊富な裁判経験を持つ弁護士に依頼し、裁判所の判断傾向に沿った専門的な立証を行うことが不可欠です。

特に、労働中の事故などで腰椎圧迫骨折を負った場合、労災保険の申請も重要となります。

逸失利益の提示額に疑問を感じたら、すぐに弁護士にご相談ください。

  • 外部リンク: 裁判例の傾向など、より専門的な情報については、裁判所ウェブサイトもご参照ください。
    裁判所ウェブサイト

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