自賠責保険で認定された高次脳機能障害が裁判では否定された事例

- 保険会社提示額
- 950万円
- 最終獲得額
- 2,962万円
ご相談内容
被害者 | 60代 女性 |
---|---|
部位 | 頭、目、胸腹部 |
傷病名 | 外傷性くも膜下出血、左硬膜下水腫、左後頭骨骨折、左外傷性水晶体亜脱臼、虹彩離断、脾動脈栓塞術後の脾動脈瘤 |
後遺障害等級 | 8級(裁判所は11級) |
獲得金額 | 2962万円 |
本件事故は、依頼者の方が歩行していたところ、前方から走行してきたトラックが歩道にはみ出て走行し、被害者がはねられたという事故です。
本件事故について、相手方保険会社から提示された示談金額が妥当か?という点の相談で来られました。
もっとも、相談者の症状や傷病名を聞いていると、高次脳機能障害が疑われたため、後遺障害を改めて行い、高次脳機能障害として9級、眼の後遺障害につき、異議申し立てにより12級に上がりました。
サポートの流れ
項目 | サポート前 | サポート後 | 増額幅 |
---|---|---|---|
後遺障害等級 | 13級 | 8級 | – |
治療費 | 169.5 | 170.5 | 1 |
交通費 | 20.5 | 20.5 | 0 |
休業損害 | 142.5 | 467.5 | 325 |
入通院付添費 | 0 | 10 | 10 |
入院雑費 | 4 | 5.5 | 1.5 |
その他費用 | 42.5 | 46.5 | 4 |
入通院慰謝料 | 177.5 | 230 | 52.5 |
後遺障害慰謝料 | 110 | 625 | 515 |
逸失利益 | 283.5 | 1,047.5 | 764 |
調整金 | 0 | 80.5 | 80.5 |
弁護士費用 | 0 | 258.5 | 258.5 |
過失相殺 | – | – | – |
合計 | 950 | 2,962 | 2,012 |
単位:万円 |
最初に行ったサポートは、後遺障害の等級変更作業です。 高次脳機能障害が疑われたこと、眼についても異議申立により上位等級を狙えると考えたため、後遺障害申請のための医証の収集から始めました。
自賠責保険13級だった後遺障害は、8級まで上がりました。
後遺障害等級8級を前提として相手保険会社には損害を提示しましたが、高次脳機能障害、眼の後遺障害をいずれも否定し、後遺障害13級を前提とする僅少な損害額の提示にとどまったため、訴訟提起を致しました。
訴訟提起を行い1年以上裁判に時間がかかりましたが、裁判官の心証は、「高次脳機能障害はない」との判断となったため、やむを得ず、約3000万円程度での裁判和解となりました。
解決内容
当初提示額よりも、約2000万円上昇する解決となりました。 裁判所においては、自賠責保険による「高次脳機能障害」の認定は信用できないものと判断されましたが、その理由はきわめて不可解、不明確なものでした。
もっとも、本件で一番の問題点は、高次脳機能障害を裏付ける画像所見、神経学的所見はあるものの、担当医師・家族・相手保険会社が見落とし、約3年半後に初めて高次脳機能障害と診断されたことです。
この事実に加え、画像所見が弱く、意識障害の程度も弱かったことも合わせて、高次脳機能障害は否定されてしまい、損害額は減少してしまいました。
訴訟が長期間に及び医療鑑定費用をこれ以上出せないという状況になったため、やむを得ず、和解することといたしました。
所感(担当弁護士より)
高次脳機能障害を自賠責保険が認めているにもかかわらず、裁判所が認めないという判断にいたった珍しい事案です。自賠責保険は、それなりの医証を揃えないと、高次脳機能障害の限界事案では、そもそも等級認定をしてくれません。本件は、その認定を勝ち取ったにも拘わらず、高次脳機能障害を否定されるという大変残念な事案になりました。
今回の一番の敗因は、高次脳機能障害による異変の症状、すなわち、記憶力の減退、集中力の低下、性格の変化等、を家族が気づいていたにも拘わらず、医師にも誰にも相談していないことです。 高次脳機能障害は本人に自覚がなく、気づきにくい傷病と言われています。
脳挫傷、くも膜下出血、軸索損傷、硬膜下血腫、頭蓋骨骨折等、頭部に何らかの診断名を受けた場合、必ず、弁護士に相談してください。 医師が「大丈夫」と言った後、異常が生じて、高次脳機能障害が認定されている事案を複数見ています。寧ろ、医師が高次脳機能障害を見落としている事案の方が多いです。 医師が「大丈夫」という言葉を信じすぎないで下さい。 気づいてあげられるのは、被害者の家族、周辺の方だけです。 後で申告しても、本件のように、残念な結果になる可能性が高いです。 頭部に損傷をうけましたら、弊所や交通事故に詳しい弁護士に必ず早期に相談をお願いいたします。