相手が任意保険に未加入の場合の損害賠償請求はどうなる?

交通事故の賠償金は相手保険会社から支払われることが一般的ですが、万が一加害者が任意保険に未加入の場合はどうなるのでしょうか。
ここでは、任意保険以外に請求できる損害賠償について詳しく解説していきます。
目次
交通事故における保険未加入の状態とは?
保険に加入していない状態のことを「無保険」と呼びますが、無保険にも2種類の状態があります。
自賠責保険のみに加入している状態
まず、公道を走る車やバイクには自賠責保険の加入が法律で義務付けられているので、「任意保険だけ未加入」というケースがひとつです。
自動車保険と自動車共済と合わせて、全国で9割弱の方は任意保険に加入していますが、1割強の方は任意保険未加入というデータも取られています。(参考:損害保険料算出機構『自動車保険の概要』)
自賠責保険にも未加入の場合
また、任意保険のみならず、自賠責保険にさえ加入していないというケースも稀にあります。
この場合、被害者は自賠責保険からも補償を受けることができません。
もっとも、こうした場合は、代わりに「政府保障事業」の救済制度を利用することができます。
※ 以下の記事も参考にしてください。
無保険(任意保険に未加入)の場合に請求できる補償内容とは
それでは、加害者が自賠責保険には加入しているものの、任意保険には加入していない場合、被害者はどのように損害賠償請求ができるのでしょうか?
まずは自賠責保険に請求する
まず、相手が任意保険に加入していない場合は、加害者の自賠責保険に請求を行います。
もっとも、自賠責保険では入通院費用や休業損害、慰謝料を請求することができますが、補償されるのは人身事故によって被害者が負傷したことへの損害賠償金のみです(物的損害は補償されません)。
また、傷害への損害賠償金は、全てを含めて限度額が120万円と決められていますので、十分な補償を受けられない可能性もあります。
※ 自賠責保険については、以下の記事も参考にしてください。
交通事故後の自賠責保険申請ガイド:被害者請求の手続きと注意点
自賠責保険とは?任意保険との違いや被害者請求のメリットについて解説
加害者自身に請求する
自賠責保険の限度額を超えた部分に関しては、通常であれば相手の任意保険でカバーされます。
しかし、任意保険に加入していないのであれば、自賠責保険の限度額を超えた損害は加害者自身に請求しなくてはなりません。
そのため、この場合には、加害者に直接交渉して、限度額を超える入通院費用などを負担してもらうよう請求しましょう。
加害者自身が支払う姿勢を見せない場合には、財産開示手続により、相手の資産を探ることも可能です。
※ 財産開示手続きについては、以下の記事も参考にしてください。
財産開示手続とは?申立ての流れ・必要書類・開示期日の対応まで弁護士が分かりやすく解説!
財産開示手続で債務者が不出頭した場合の対応策|強制執行を成功させるポイント
「第三者からの情報取得手続」と「財産開示手続」の違いを徹底解説|手続の流れ・活用シーン・実務ポイントを詳しく解説!
自分が加入する任意保険を利用する
加害者に請求しても、支払い能力がなければ現実的な手段ではなくなります。
そこで、被害者自身が加入している任意保険を利用する方法も検討しましょう。
例えば、無保険車傷害保険に加入していれば、加害者から支払われない不足分の賠償金を自身の加入する任意保険会社がカバーしてくれます。
但し、訴訟提起をしない場合、保険会社の低額な基準で支払われるため、十分な賠償金を受け取れない場合があります。
この点は、よくトラブルになる点ですので、自身の保険会社に十分に確認するようにしてください。
また、弁護士に依頼して、自身の保険会社に対して、訴訟提起を検討してください。
※ 以下は、弊所において、訴訟提起を行い、被害者側保険会社から高額な賠償金を獲得した事例です。合わせて確認してください。
後遺障害12級獲得後、裁判により被害者側保険会社から最大限の損害を獲得した事例
そのほか、過失割合に関係なく怪我を負えば人身傷害保険で保険金が支払われますし、車両保険によって車の修理代などが補償されます。
相手が無保険の場合にすべきこと
相手が無保険の場合はいくつかの点に注意しておく必要があります。
治療には健康保険や労災保険を利用する
交通事故による怪我の治療は、通常の治療と同様で健康保険や労災保険を利用することができます。
ところが、稀に、交通事故の治療の保険診療を断る病院もありますが、加害者が無保険の場合には自費での出費を抑える必要があるので、極力健康保険や労災保険を利用するようにしてください。
これにより、万が一加害者が賠償金を支払ってくれないというトラブルが起こった際でも、治療費を抑えられているので被害者の負担を軽減できます。
請求も示談も書面に残す
加害者に直接損害賠償を請求する場合や、示談交渉をする場合は、必ず形に残る書面で証拠を残すようにしてください。
また、加害者に自賠責保険の超過分を請求するのであれば、内容証明郵便を利用することで「請求した」という証拠を残すことができます。
さらに、示談交渉における示談書を公正証書にしておけば、相手が支払いをしてくれないという場合に強制執行手続きをとれるようになります。
まずは弁護士に相談する
最後になりますが、弁護士に相談することもひとつの選択肢です。
弁護士に依頼することで、相手が無保険でもどのような方法があるのかアドバイスをもらうことができます。
もし加害者自身に支払い能力があるのであれば、交渉や裁判を通し支払いを求めることも可能です。
まとめ
加害者が無保険の場合でも補償を受ける方法はいくつかあります。
特に加害者に支払い能力があるのであれば、交渉や裁判を通して支払いを履行してもらうべきです。
ただし、私人間で交渉することはトラブルに発展しやすいので、弁護士を通して行うことが望ましいと考えられます。
無保険車特約が自身の保険についている場合、訴訟提起が必要となる可能性があります。
自身の保険会社に確認し、なるべく弁護士に委任することをおすすめ致します。
弁護士に依頼するには費用が心配と考える人も多いかもしれません。
もっとも、自身や家族に弁護士費用特約の加入があれば、弁護士費用を気にすることなく利用することができます。
当事務所は交通事故に詳しい弁護士が、無料相談の時点から担当して、気になる疑問や不安にお答えします。
ご相談いただくことで解決策を見つけることができるかもしれませんので、まずはお気軽にご相談ください。