加害車両運転者以外にも請求できる?損害賠償責任を負うのは誰なのかケース別にご紹介

はじめに

加害車両運転者または加害車両付保任意保険への請求が原則

交通事故に遭った場合、原則として加害車両運転者または加害車両付保任意保険に対して損害賠償請求を行います。しかし、事故の状況や関係者によっては、その他の者に請求することができる場合もあります。

加害車両運転者が任意保険に加入していない場合、加害車両運転者に直接請求しても、資力がない、連絡が取れない等の事情で交渉が進まず、適正な賠償金を獲得することが困難になる可能性があります。加害車両運転者が自動車やバイク運転走行中の事故の場合は、加害車両加入の強制保険(自賠責保険)に対し賠償金の請求をすることができますが、傷害部分については支払限度額120万円となっており、それを超える損害がある場合、支払を得ることができません。

そのような場合に、別の者に請求ができないかどうかを検討する必要があります。

本記事では、交通事故に遭った場合、どのようなケースで誰に対して損害賠償請求をすることができるかを解説していきます。

加害車両運転者以外へ請求する方法

使用者責任に基づく請求

使用者責任は、民法715条より、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と規定されています。

つまり、使用者自身が直接損害を与えているわけではないですが、被用者が仕事中に事故を起こした場合には、使用者である会社もその損害の責任を負うことになります。

被害者は、加害者本人とは別に、使用者である会社に対しても損害賠償請求を行うことができます。

使用者責任が成立する為には、下記の要件が必要となります。

被用者に不法行為責任があったこと

加害車両運転者が故意または過失によって事故を起こした場合、使用者責任が成立します。過失とは、適切な注意を怠り、人や物に損害を与える行為のことです。例えば、交通ルールを守らずに運転したり、安全確認を怠ったりした場合などが該当します。

使用者と被用者の間に使用関係があること

使用者責任が成立するには、会社がその事業のために加害車両運転者である被用者を使用していたという事実が必要です。直接雇用関係がない場合でも、実質的に指揮監督をしていた事実があればこの要件に該当します。

被用者の不法行為が事業のために行われたものであること

加害車両運転者である被用者の行為が、使用者が行う事業の執行と直接関係していることが必要です。例えば、就労時間外に社用車を私的な理由で使用した場合に発生した事故などは、事業の執行とは言えないということで、使用者責任が認められない可能性があります。

使用者責任の免責事由に一致しないこと

民法715条の後文には、「使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」と規定されています。

しかしながら、多くの判例では使用者責任の免責は認められていません。

運行供用者責任に基づく請求

運行供用者責任は、自動車損害賠償保障法(自賠法)3条より、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。」と規定されています。

運行供用者の定義は、自動車やバイクなどの運行を支配する人、またはその車を利用して利益を得ることのできる立場の人のことを指します。簡単に言うと、原則として、車両所有者・車両使用者が、運行供用者に該当します。

運行供用者が別に存在する場合、被害者は加害車両運転者とは別に運行供用者に対しても損害賠償請求をすることができます。

使用者責任と運行供用者責任の違い

使用者責任と運行供用者責任は、どちらも自動車事故における責任の一種ですが、成立要件や対象となる損害について異なる部分があります。

責任を負う者の範囲

使用者責任は、被用者と使用者の間に使用関係がある場合に成立します。一方、運行供用者責任は、自動車を運転し、自分の利益のために運転させている人が負担する責任であり、使用関係は必要ありません。よって使用者責任よりも責任を負うべき対象が広いと言えます。

損害賠償請求の範囲

使用者責任の場合は、人身損害・物上どちらの損害について賠償責任がありますが、運行供用者責任の場合は、人身損害のみに限られます。

被害者の立証責任

使用者責任に基づき損害賠償請求を行う場合、被害者側が加害者の過失・不法行為を立証する必要があります。

一方運行供用者責任に基づき損害賠償を行う場合は、被害者が加害者の過失・不法行為を立証しなくても請求することが可能です。

使用者責任 運行供用者責任
責任を負う者
の範囲
人身損害、物上損害 人身損害のみ
損害賠償請求
の範囲
使用関係がある 車両の運行を支配し、その車両を利用して利益を得ることのできる者(使用関係は要件ではない)
被害者
の立証責任
必要 不要

加害者が未成年の場合

未成年者が加害者の場合、責任能力の有無が問題になります。未成年者の中でも、責任を弁識する能力がある場合は、損害賠償責任を負うことになります。民法712条では、「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかった」場合に限り不法行為責任を負わないということになります。おおよそ12歳以上の場合は、責任を弁識する能力があるとみなされる傾向があります。自転車走行による事故等が未成年が加害者となり得る事案になります。

責任能力なしの場合

責任能力がないと判断される場合は、未成年者に対して請求をすることができません。

その場合は、未成年者を監督する義務のある者(親権者、後見人)が損害賠償責任を負う必要があります(民法714条の監督者責任)。

責任能力ありの場合

未成年者の加害者が自転車保険などに加入されている場合は、保険会社に請求することになります。未加入の場合ですが、直接未成年の加害者に対し損害賠償請求を行っても、通常は資力がないため、現実的に支払いを期待できません。そのような場合も親権者に対して責任を追及できる場合があります。

親権者自身の不法行為責任を追及(民法709条)

監督者責任の場合は、自ら監督義務を怠らなかったことを証明する必要がありますが、不法行為責任を追及する場合は被害者が親権者の監督義務違反を証明する必要があります。

運行供用者責任として追及(自賠法3条)

未成年者が親の車やバイクに乗って事故を起こした場合、その車両の所有者である親権者に対して損害賠償請求することができます。

加害者が死亡している場合

加害者が亡くなった場合でも、加害者が任意保険会社に加入していた場合は、その任意保険会社が支払いの義務を負います。しかし、任意保険会社に加入していなかった場合は、損害賠償請求は相続人に対して行われることになります。相続人は、被害者と加害者の間で生じた請求権や債務を引き継ぎ、加害者が負うべき損害賠償責任を負担することになります。

ただし、相続人がいない場合や相続人が相続放棄をする場合はどうすればばよいでしょうか。そのような相続人がいない場合については家庭裁判所より選任される相続財産管理人より相続財産の清算が行われるため、その清算の際に相続財産の限度内で損害賠償を受けられる可能性があります。

まとめ

以上のように、交通事故の損害賠償を請求できる相手は加害車両運転者だけでなく、事故の状況に応じてその他の資力のある者に対しても請求できる場合があります。被害者が誰に対し責任を追及すればよいのかを判断することは難しいケースがあります。

そんなときは、まず弁護士の無料相談を利用することをお勧めします。

初回の相談を無料で行っている弁護士事務所も少なくありません。まずは無料の相談に行って、誰に請求すればよいかアドバイスをもらいましょう。必要であれば、弁護士に依頼することで示談交渉を丸投げし、治療に専念していただくことが可能です。

当事務所でも初回の電話無料相談を行っておりますので、お気軽にご連絡ください。

相談料・着手金0円 完全後払い制 ※弁護士特約の場合は除く/賠償金が増額できなければ報酬は一切いただきません!

0120-122-138
24時間受付 メールでのご相談はこちら